ラン×グラフ

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ANDORRA ULTRA TRAIL いいのわたるさん、丹羽薫さん報告会

昨日(2019年8月2日金曜日)の夜、さかいやスポーツシューズ館で開催された「ANDORRA ULTRA TRAIL 233km 累積20000m, 準優勝の軌跡」に行ってきました。

定員50名、申し込み順のレース報告会です。

アンドラ・ウルトラ・トレイル

あの飯野航さん、丹羽薫さんが男女ペアの部で2位でゴールしたレースの報告会ということで申し込みました。アンドラ・ウルトラ・トレイル(7月16~21日開催)については下記のサイトをご覧ください。

www.andorraultratrail.org

開催地はスペインとフランスの国境にあるピレネー山脈にあるアンドラ公国です。国家元首はスペインのウルヘル司教とフランス大統領の二頭政治、公用語はカタルーニャ語(スペインのカタルーニャ地方の言葉)、人口約8万人、面積は金沢市と同じ程度の小さな国です。

一番長いレースであるEUFORIAは全長233km、累積標高20,000mで、いいのさん、丹羽さんが走ったのはこれです。アンドラ公国隅から隅まで走り回るようなコースです。他に170km、112km、82km、42.5km、10km、2.5km。(知ったかぶりして書いていますが、報告会で話を聞くまでこのレースの存在すら知りませんでした)

いいのさんが持っている地図の赤い線がコースで、アンゴラ公国はほぼこの範囲です。

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レース報告は、いいのさんと丹羽さんが1本のマイクを受け渡しながら、掛け合いで進みました。

コース

下の地図は公式サイトの地図をコピペしたものですが、前半が上り下りの変化がキツくて後半の方が比較的走りやすいコースなのだそうです。公式エイドはおおむね等間隔(といってもばらつきはありますが)4カ所のみです。

コースは自分で探すレースですが地図読みは不要で公式のGPSデータが支給されGPSをみながら走っていいそうです。

GPSウォッチにGPSデータをアップしたところ正確さに欠け、特に前半は道のないところ(いいのさん曰く「自由度が高い」)が多く分かりにくかったり、あるところでは頂上まで行くはずなのにウォッチ上ではそうなっていないため登らずに折り返したところ、他の選手からクレームが入ったりしたそうです(結果として問題はならず)。

いいのさんは「アルゴリズムの問題らしい」と説明していましたが、長い距離なのでウォッチには自動的に間引かれてアップされたのではないかと思います。

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レース計画

レース計画は一昨年の優勝者のタイムから作られたそうです(昨年の優勝者は一昨年より速いタイム)。

結果としては計画より速く走れ睡眠時間もわずかしか取らず、計画より10時間以上(メモしてないので覚え違いでなければ)速いタイムでゴールしたそうです。

レース中はスマホで他のランナー(チーム)の位置をみながら進んだそうですが、必ずしも正確な位置が把握できていなかったようです。

1位のチームとの時間差が小さかったので、もし正確な位置が分かっていれば、という思いがいいのさんにあったかもしれません。

サポートメンバー

4カ所の公式エイドだけでは到底足りないので他にはサポーターがつきました。各地点までの想定タイム、何をする何を補給するどこで睡眠を取るなど詳細な計画が立てられています。大きな表になっていてプロジェクタで大写ししても文字が読めないくらいです。

このサポーターをされた方がとても優秀(プロ)で、事前の打ち合わせでここでは何が欲しいとリクエストした以外のものも準備されていたそうです。実際にレースを走ると欲しいものが変わったりするそうですが、それがしっかり用意されていたというすばらしさ。

骨折

丹羽さんにとってはこれまでに走ったことのない距離のレースだったそうです。

その上、前半(上の標高グラフの真ん中左寄りの一番低いところに下る途中)で松ぼっくりを踏んで転倒し右手を骨折していました。(レースのメディカルでは骨折していないと言われたそうですが、帰国後に病院に行ったところレントゲン写真を撮るまでもなく骨折ですね、と言われたそう)

包帯が痛々しいですね。

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ペアランでは二人が200m以上離れてはいけないそうです。GPSが腕についていて(取り外すと分かるように紙テープがまいてある)がっちり「固定」されているそうです。

転倒して左手を痛めた(骨折とは知らないまま)痛みを訴える丹羽さんをいいのさんは無視して振り返りもせずに走って行くので、殺意が芽生えながら200m以上離れてしまうではないかと必死に追いかけたそうです。

でもそのおかげで2位という好記録を出せたと丹羽さんはおっしゃっていました。

ペアで走るということ

レース中のお二人の関係は聞いていてなかなか面白いものでした。

男性であるいいのさんは登りが強いため、登りでは丹羽さんに合わせてペースを我慢していたそうですが、おかげで脚が残っていい結果になったかもと言っていました。

丹羽さんはいいのさんからレース前に、途中でだまっちゃうかもしれないけど機嫌が悪いからじゃないから気にしないで、と言われていたそうです。(手が痛いと訴えたのを無視されたのはそういうことと理解していたとか)

一方のいいのさんは、女性はいくらでも話しができるけど、男は1日に話せる言葉の数は決まっているので、「口が終わっちゃう」(脚が終わるのではなく)ので、黙っちゃうのだとおっしゃっていました。

いいのさんが丹羽さんに前を譲って走っていた終盤についても、丹羽さんは「丹羽さんのペースで走って」と譲ってくれて、そのうち我慢できずに前に出たと理解していたのに対して、いいのさんは短いコースのランナーとすれ違う区間で他のランナーに応援されて泣いている丹羽さんを後ろから見たくて後ろを走り落ち着いたので前に出たとか。

そんな風に一緒に走っていても相手の行動への理解に行き違いがあって、それがいい方に解釈しようという結果だ、というところが面白いところでした。

疲れて行き違いがあって険悪になるのではなくて、事前のコミュニケーションと善意に解釈することで、終始良好な関係を保って最後まで走ったのだろうと思われます。

申し込み段階で出ていた質問があらかじめスライドに組み込まれていて、それに対してお二人が答える場面がありました。その中にペアランでよかった点と悪かった点についての質問があったのですが、お二人からいい点はいくつも挙がりましたが、悪かった点が挙がらなかったのは、そういうことなんだろうと思いました。

その他

レース中の写真など(動画は作ったPCと違ったためか動きませんでしたが)をまじえてうかがう話は臨場感にあふれていました。グレートレース(番組)では映像で見ることができますが、それ以上にその場の光景が浮かぶようです。

お二人の装備一式の紹介もありました。また今回レースに使った装備の中で特におすすめだったものも紹介されました。

笑顔のランナー

いいのさんと言えばレース中もにこやかなあの笑顔ですよね。丹羽さんも笑顔の印象が強い選手です。その笑顔についての質問もありました。

丹羽さんはレースはスタートラインにつくまでの練習で決まっていて、今回のようにいいのさんにひっぱってもらっていい結果が出るにしても限界がある、スタートラインについたらあとは楽しむしかないと腹をくくっているというのが、笑顔の理由なのだそうです。

対していいのさんは、なんでこんなばかなことしてるんだろうと思って笑って走っているのだとか(照れ隠しな表現でしょうね)。

 

最後に丹羽さんの今後のレースの予定(次はさらに距離を伸ばして300キロのレースとか、その後は国内、ゲストランナー等)と、いいのさんの転職の理由についての質問への答えがありました。

 

終了後に全員の集合写真を撮り、その後は前に展示されたレースに使った装備をみたり写真を撮ったり、お二人からのお土産をいただいたりして帰りました。

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全員に配布されたおみやげ。

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あのいいのわたる選手、丹羽薫選手の報告会だから(レースについては知らなかったけど)ちょっと行ってみようというくらいの気持ちで申し込んだのですが、期待以上に面白く楽しい報告会でした。