ラン×グラフ

ランニングしながらグラフを更新するブログ

天子山地試走(のお供)

「富士山1周レースができるまで~ウルトラトレイル・マウントフジの舞台裏」という本のKindle版を最近読み始めました。著者は鏑木毅さんと福田六花さんです。2015年に出版されたものです。

UTMFコース「試走」のわけ

昨日、このUTMFのコースのうち天子山地の試走へ行ってきました。

といっても私はUTMFにエントリーしているわけではありません。そもそもエントリー資格があるわけではなく、100マイル走れる能力もないので、出走予定のランナーさんにお供させていただきました。

私はランニングに関わるいろいろなことを楽しみたいと思い、マラソン、ロードレース、リレー、スローラン、ロゲイニング、トレラン、オリエンテーリング、レースのボランティアなどと手を広げてきました。今後、やってみたいことの1つにロングトレイルレースのサポート(走る方のサポートではなくエイドでの特定の選手のサポート)があります。

幸い、縁あって2020年のUTMFではサポートをさせてもらえることになっていたのですが、残念ながら新コロナウィルスの影響で、プライベートサポートは全面禁止となってしまいました。せめて今後、新コロナウィルス問題が終息に向かい、レースが無事に開催されることを願っています。

サポートするならコースの状況、ランナーがどういうところを通るのか理解しておいた方がいい、という理由をつけて試走に同行させてもらい、コースの一部を走ってみる機会を得ることになりました。

当日は残念ながらサポート予定のランナー本人のコンディションが悪く、本人を除くメンバーでの試走となりました。

地図作り

今はスマホの地図アプリで自分の場所はすぐに分かります。山専用の便利なアプリもありますが、私は自分一人でスマホ無しでも迷子にならない準備をすることにしました。実用的な理由だけでなく、以前に地図読み・ナビゲーション講習会に参加して、地図読みも楽しみたいという目的を兼ねています。

電子地形図25000オンラインで、25000分の1の地図のダウンロード版を購入しました。今回の移動範囲は2枚で網羅できます。これを2.5倍に拡大印刷して1万分の1にし、A4の紙に分割印刷して糊で必要な範囲のものをつなぎ合わせ、裏からテープで補強します。

25000分の1の地図は山間部の等高線は細い線(主曲線)が標高10m間隔、太線(計曲線)が標高50m間隔で描かれていてわかりやすいのです。これを拡大して1万分の1にすると1cmが100mになるので距離が計算しやすくなるのです。もちろん大きくなることで等高線が見やすくなります。

まず予定ルートをカラーマーカーで描き込みます。次に道の分岐、等高線や地図記号をみながら、道を間違える可能性があるところ、進行方向が変わるところ、ピークなどに印をつけて、書き込みをしました。

さらにUTMFのコースとしての距離表示を書き込みます。これが試走時の距離の目安にもなります。あと何メートル先にピークがあるのでそこを目指して移動とか、何メートル先の分岐で止まって地図と方位を確認とか、道をロストしないためにも距離が簡単に把握できることは重要です。

また等高線の変化をみて起伏の変化を把握して、比較的平坦なところ、勾配のあるところ、急勾配のあるところや、コースの両側の尾根、谷の状況、植生などもナビゲーションの目安になります。

ただし地図に現れない起伏(10m未満の変化)があることにも要注意で、今回はこのため地図をみながらも現場で試行錯誤した部分がありました。

試走当日

三島駅で待ち合わせ、自動車で白糸の滝まで移動。天気のいい日で車窓からきれいに富士山が見えます。ただし夕方から天候が悪化する予定なので、気をつけて行動することにします。

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車を駐車場に停めて、ウェアや荷物の準備をしてトイレに行ってから出発します。しばらくは試走禁止区間なのでそこを出るまで1.5キロほど歩いて移動しました。

何本か川を渡ったところで試走禁止区間を過ぎ、ゆっくりと走り始めました。

実は最初のあたりで地図をしっかり確認せずに移動していて、あやうく曲がり忘れそうになったり、ということがありました。迷わないだろうという先入観でナビゲーションを徹底せずに油断するとこういうことになります。同行者に指摘されて正しい道に進みました。

山に入りしばらく西に進みます。

途中で道路を越えるところがあり、地図上でも確認できますが、現地に来てみると地図の印象とはちょっと違いました。登山道を車道が横切っているような印象を持っていましたが、当然のことながら車道を登山道が横切っているのです。登山道から車道に出て、次の登山道に入るような感じです。ここでいいんですよね、といいながらちょっと勾配の急な登山道に入りました。

このあたりから起伏が急になっています。地図をみると確かにここから先は等高線が狭くなっています。この先は等高線の間隔広いところはまぁまぁ傾斜のある勾配、狭いところは結構頑張って登る勾配という感じです。(地図読み初心者である私が地図をみた時の印象と実際の勾配では実際の方がきつい感じです)

勾配が変わったのに気がついたら地図をみて、現在地確認を時々行いながら進みました。まめに確認していると自分のいる場所はほぼ正確に分かりますが、しばらくさぼっていると間違えます。ガーミンのGPS標高表示をみると絶対高度がおおむねわかるので、これで答え合わせはできますが。

駐車場から6キロ、UTMFのコースで34キロ手前あたりで、北向きに進行方向が変わっていますが、山の中を歩いている時には案外気がつきにくいものです。距離を意識し時折コンパスを確認していました。(地図はケースに入れて片手に持ち、コンパスは落とさないようリュックにつないでポケットに入れていました)

UTMF34キロ付近が天子ヶ岳の山頂1330mです。

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ここで地図をみて先の状況を確認しました。一旦少し下がってちょっと先に再度ピークがあるように見えます。その先500mほどで鞍部(峠)があり、再度登っていくことがわかります。次は35.5キロあたりにある長者ヶ岳の頂上1335mが目標になります。

途中でハイカーさんのグループに出会い挨拶しながら進んでいたのですが、トレランの試走ですか?と訪ねられしばらく話をし、UTMFの説明などもしました。

右側に田貫湖が見えました。(私は地図を折りたたんでいたので、田貫湖ですよね、と言われて知りました)下の写真は長者ヶ岳の山頂からみた田貫湖です。

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長者ヶ岳の山頂には別のハイカーさんのグループがいて、ここでも話をしました。後ろからさきほどのハイカーさん達も来て話に加わります。みなさんUTMFのことはご存じです。

ここから先に進む時、私は地図読みの必要性を見落としあやうく田貫湖に降りそうになりました。地図をよくみるとここで左右に道が分岐していて左がコース、右が田貫湖へ下る道だったのです。

現場では右の道が直進でその後卯木に折れていくのですが、地図で稜線に沿ったUTMFのコースが直進のように見えます。自分がマーカーで色を付けたので、なおさら左が直進のような印象を与えるのです。

無事に左側に降りて引き続き稜線を進むことが出来ました。次は500mほど先のピークが目標です。さらに1キロ弱先にもピークがあります。起伏の変化で地図上の位置を確認しながら進むのですが、時々さぼって自分の位置に自信がなくなったりします。(GPS標高で答え合わせをしたらり、たまにスマホの地図をみました)

さらに先、UTMFの38キロ地点あたりに天狗岳。標高1373mです。標識がかわいいですね。

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このあたりにも東側に分岐する道がありますが、ここは迷いませんでしたが、この先にちょっと試行錯誤した場所があります。

地図上では小さなピークがあるだけで、地図上の登山道はピークのやや西側(左側)を通っているだけのように見える場所です。地図だけから言えば西側の巻き道かなぁと思えます。

現場でみると、地図にない右側に下る道、正面の道には見えにくい岩のごつごつした尾根、そして左にもいけるかなぁという感じの斜面があります。右の道を行ってみたところ、ずーっと下まで降りていきそうで、尾根道に戻りそうな感じはしません。正面の尾根をよじ登ってみたところ、先に尾根は見えますが、一旦断崖のように途切れているかのように見えました。

結局左側の斜面(道かどうか疑問)を通って、小ピークの反対側に出ました。反対側からみると小ピークをよじ登るのが正解で、断崖のように途切れているように見えたのは小さな段差でした。

このあたりに鉄塔と小屋がありました。

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地図だけでは判断できない部分ですが、レースの時にランナーがつながっていれば迷うことなく進める部分だと思います。

ここから1441mのピークを越え、さらに1446mのピーク。そしていよいよ熊森山の山頂1575mに登ります。

前半は余裕だった私もこのあたりはだいぶ疲れてきて、時々「しんどい」などとついつい口からこぼれてしまいます。前日も試走して今日は序盤から息があらめだった同行者は呼吸が落ち着いてきてペースが安定しているのに対して、私は息が上がりおいて行かれないように頑張って登っている感じです。さすがUTMFを走ろうという人は違うなぁと思いながら登っていました。

熊森山の山頂でも休憩し補給をしましたが、急激に身体が冷えてきたので、1枚着込みました。

ちなみに寒くてウェアが足りないのは怖いと思い、この日はドライレイヤー、半袖ランシャツ、長袖ランシャツ、ウィンドジャケットでスタート。この段階でレインジャケットを上から着ました。さらにランシャツ1枚とウルトラライトダウンがリュックに入っています。手袋もいつも使っている指を出せるタイプとは別に厚手のものも持っています。

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UTMFのコースはここから右折して東に降りていくのですが、ここは試走禁止区間です。

最近試走した方のブログやfacebookを見ると、この先のトンネルの上あたりで登山道を外れて東に400~500mほど進みトンネルの出口あたりで車道に合流していました。やや難しそうなことを書いてありましたが、少なくとも3グループはここを通ったようです。

私達は安全にここは通らず先に進み、登山道を通って下山する予定でしたが、熊森山の山頂で地図をみるとこの先、行った下ってからさらに高い1605mまで登らなければならないことに気がつきました。(計画の段階で気がつくべき事項ですが)

下は座り込んで地図をみる筆者です。

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この時点ですでにかなり気温が下がっていて、ここからさらに下って登る体力と温度低下のリスクを考慮して、先人のルートをたどってロードに降りることにしました。

下りはじめたところ、木々に一面に氷がついている光景がいきなり現れました。美しい光景で写真を撮りましたが、気温は確実に低下しています。1605mまで再度登らない選択は正しかったようです。天気予報のとおり空は一面雲に覆われています。山の中で天候悪化のリスクがありました。

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ここからは非推奨ルート

登山アプリをみると、東に降りるルートよりも、西に降りてトンネルをくぐるルートの方が多くの人が通っているようでしたが、先人の記録を頼りに東へ降りることにしました。

まず下り口はトンネルの真上よりも少し先にあります。トンネルは鞍部にあるので、そろそろ下りが終わったかなぁと思うたびにスマホで現在地を確認して下り口を探します。

このあたりまで降りてきただけでも標高が下がり少し暖かくなってきます。

それらしいところに出て右をみると下りやすそうな広い谷のようなところがあったので、登山道を外れてここに入りました。(ちょっと手前から入れば尾根に出ていたはずですが降りやすいところを選んでしまいました)

降り進むと明らかな谷底となります。足下は安定しない石や岩がごろごろしていて進むのが大変です。一般に谷部を降りるのはいい選択ではないはずですが、自分の場所ははっきり分かっていてトンネル出口までの数百メートルなので、ともかくそのあたりまで進もうと決めます。

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道のありがたさを身にしみながら、位置を確認しつつ降りていきます。

短い距離ですが、慎重に降りていきます。

右側は尾根になっていて、トンネルの出口に出るためにはどこかで尾根を越えなければならないのは分かっています。ここを通った先人が複数いるのでいけるはずだと思って進みます。

トンネル出口の標高と同じかやや下がったあたりで、降りている谷の向きが道路から離れる方向に変わっていました。

同行者に「この尾根に登りましょう」と提案され、見上げると斜面はきつく、ずるずると崩れそうな安定しない斜面です。木の生えている部分を登れば尾根にたどり着けるだろうと検討をつけて登り始めました。

とりつく次の木を見つけながら、慎重に登り続けて、ようやく尾根にとりつくことができました。そして尾根からは目標とする道路が(ちょっと離れてはいますが)見えました。

狭い道のない尾根を登っていったところ、道路より高い位置まで来てしまいました。このまま登り続けても道路には出られないので、尾根の反対側の急斜面にはりついて平行に移動することにします。

少し移動すると先にいけるかどうか分からなくなりましたが、下をみると道のような幅のある水平な地面が見えました。木が生えてきてはいますが、かつては道路として使われていたような場所でした。

ここに降りて道路に向かったところ、道路との接続部分はガードレールが設置されておらず、無事に道路に入ることが出来ました。

下のような写真のところです。右手の斜面から降りてきて、正面の道路に出ました。

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先人のルートと違ったのではないかとも思いましたが、登山道から尾根に出ていたとしても、かなり難しそうです(それでも尾根に出た方がましだったかも)。

地図によってはこの東側からトンネル出口にルートが示されてるようですが、等高線や現場の地形と比べても正確さにはかなり疑問があり、実際の行動の際にはほとんど参考になりません。(等高線からみても現実の地形からみても非現実的な場所に線が描いてあります)

私達は結果として無事に道路に戻れましたが、リスクの大きなルートだったと思います。

1605mにもう一度登るルートも天候等のリスクがあるので、より多くの人が通ったと思われる西側からトンネルに出てトンネルを通るルートが正解だったかもしれません。

ロードからゴールの駐車場へ

ロードに出て1kmほど進んだところが、UTMFのコースで登山道からロードに出る箇所で42キロ地点の手前あたりです。ここから先の峠道はUTMFのコースなので、試走の続き、ということになります。

45キロ過ぎで勾配が緩やかになり47キロあたりで山が終わった感じでしょうか。48キロ地点手前でUTMFのコースは左(北)に向かいますが、この先で幹線道路に出て南に折れてスタート地点の駐車場に向かいました。

登山道からトンネル出口までの難所で予定外に時間を要してしまったため、駐車場に戻った時間が見込み時間より遅くなってしまいましたが、駐車場はまだ開いており無事に試走を終えることができました。

 

反省点もありましたが、UTMFのコースが経験でき、地図読みの経験を重ねて課題を把握できることもでき、またトレラン、マラソン談義も楽しむこともできた充実した試走でした。